高田大五郎-闘技者-




「よし、行ってこい」
大五郎は背中を押されてリングに向かった。

180cm108kgの大きなガタイ。
その身体を守るプロテクターはリングシューズ、膝当の他に黒のショートパンツだけだった。
彼のために特別に薄く作られたパンツは、ソーセージの形の膨らみと2つの双球からなる饅頭のような膨らみを浮き上がらせている。そしてそれは彼が歩く度に揺れ動き、左右の太ももに当たって形を変えた。

大きな背中に分厚い筋肉、戦う前から汗をかいて熱気を発散している。彼は専用の通路を通ってリングに上がった。ロープを跨いでリングに上ると、床の滑り具合や弾性を確認する。

暗い室内は照明は少なく、リング上だけが光を受けて光っている。
そんなライトの光を浴びて彼は観客席を見渡した。

部屋の中央に位置したリングは、観客がより近くで試合が観れるように配慮してある。
そして床上での攻防が見やすいようにリングの土台は低くなっていて、リングの近くの客席では、闘技者の熱気や汗がすぐ側で感じられるように設計されていた。
ただし危険のないようにリングの周りにはスペースを空けて鉄柵が張り巡らされていた。

客は少なく、見渡した限り10人もいない。その代わり、それぞれが大袈裟で悪趣味な椅子に踏ん反り返り、酒片手に試合を眺めている。

どの客も金持ちだという事を彼は知っていた。
大五郎はそんな客たちを吐き気を催す程嫌悪しているが、口には出さない。その客のおかげで自分達が生活できる事を理解しているからだ。

しばらくすると対戦相手が部屋に現れた。華奢な身体に悪趣味なドクロのマスク。
大五郎は悪態をついた。
「だっせぇマスクだな」

相手がリングに上がり、そして大五郎と対峙する。
このリングにゴングは無い、お互いにリングに上がった瞬間から試合が始まる。

まずは力比べだ。大五郎とマスクの男は両の掌を合わせて腰を落とした。
2人の男の腕に力が入る。マスクの男は思ったよりも力があるが、大五郎の力にはかなわなかった。

大五郎は相手を引きずり、ヘッドロックを決める。
このまま絞め落とす事もできる。ギリギリと相手の頭を締め上げた。だが大五郎はすぐに離した。
「来いよザコ」
そう言って大五郎は挑発する。すぐに相手を負かしてしまえば、目の肥えた客たちが文句を言う。

相手は果敢に攻め込んできた。
直線のタックルを大五郎は受け流し、自らも反対側のロープに向かう。
そして反動を使って逆に相手の身体にタックルを食らわせた。
100kgの体重をかけたタックルは相手を吹っ飛ばす。
相手は身体を二転三転してリングの端に転がった。

相手を追いかけて大五郎はすかさず相手のタイツを掴み、そして身体を持ち上げた。

相手の身体を頭を下にして高々と持ち上げ、そしてそのまま背中から落とす。
ドシン!!「かはっ!!」
骨の軋む音と一緒に相手の悲鳴が響く。

大五郎の攻撃は終わらない。
彼はトップロープへ上がり、相手めがけて飛び上がった。
100kgの巨体が相手の身体に落ちる。
リング全体が衝撃で揺れ動いた。

相手が悪かったなと言わんばかりに大五郎は攻め続けた。豪快なラリアットを食らわせ、相手を振り回しそして止めを刺そうと近づいた時、彼は顔をかきむしられた。

「て、テメェ」
そして次の瞬間、大五郎の身体は浮き上がった。
「うぉっ!!」
相手の蹴りは綺麗に大五郎の股間へと下から突き刺さった。

「おっ!!ぉお」
大五郎は急所攻撃に顔を歪ませ、腰を引いて股を閉じた。
そのまま片手で股間を押さえ、後ずさりして後方にあったロープに力なくもたれた。

そこに相手は近寄る。
そして追撃する相手のボディブローが大五郎の腹にめり込む。
「グボッ!!」
もう1発
「おぉぉ…」
大五郎の口から唾液に混じって胃液が吹き出す。

大五郎は相手に腕を掴まれて反対に投げられた。
男の意地だ。このまま相手の思い通りにはさせない。
そう思い、背中にロープを受けて彼はそのままラリアットを食らわせた。
相手は勢いよく跳ねてリングに打ち付けられる。

大五郎は金玉からくる重い痛みを感じながら倒れこむ相手を起き上がらせようとする。

だがその時、相手は思い切り腕を振り上げた。

「ぐぉぉぉぉぉ!!」
大五郎の野太い悲鳴がリングに響き、彼の精悍な顔が歪む。

薄手の黒いパンツの中で、男の急所がカチ上げられ、男にしかわからない激痛が彼を襲う。
「くそ!!」
そのまま彼は前のめりに倒れこんだ。
大きな尻を突き上げ、目をぎゅっと閉じて口をだらし無く開ける。
そして片手でカチ上げられて強打した金玉を押さえた。
脚をバタつかせて金玉の痛みを紛らわせる。
2撃目の金的は予想以上に効いた。金玉からジェット噴射のように激痛が何度も襲い、下っ腹が締め付けられるように苦しくなってくる。

「ぐぉぉぉ…タマが…ぅぉぉ」
大五郎はリング上で股間を押さえて悶絶した。

「いいぞー、やっちまえ!!」

客はそんな姿を楽しんだ。ここにいる客はただの金持ちだけではない。麻薬や人身売買でのし上がって来た人間もいた。この場所は、その中でも特異な者が集まっている。

大五郎の汗まみれの姿や、ケツの下から見える男の膨らみや、うめき声。筋骨隆々な男が汗にまみれて戦い、逆転の急所攻撃で悶える姿はここの客にとっては最高の楽しみだった。

客の歓声や嘲笑が大五郎に突き刺さるが、急所の痛みが大きくて股間から手を離せない。
ムチムチの太ももの間にある2つの玉。男の急所であり、大五郎の弱点である。そんな大切な雄の象徴を蹂躙されて大五郎はリング上でのたうち回った。

「おっ、おっ…」
大五郎は内蔵を抉る急所の痛みに立ち上がる事も出来ず、マスクマンの攻撃を防ぐ事が出来ない。
背中からストンピングを何発か食らうが、股間を押さえたまま動けなかった。

大五郎はまだ痛む股間を押さえながら相手に立たされた。そしてコーナーまで運ばれる。

反撃したいが、急所の痛みでどうにもできない。筋肉が言うことを聞かなかった。
そのまま相手の思うままにコーナーに固定されてしまう。

そこをもっと攻撃してほしい。そんな客の欲求を対戦相手であるマスクマンもわかっている。

両手をロープに巻き付けられ、両脚も開かれてロープで固定されて宙吊りにされた。
大五郎の急所が股の間でぶら下がり、狙ってくださいと言わんばかりに揺れている。

「おいやめろ!!まて」
男の急所だと言えども相手は容赦がない。大五郎の股間は、マスクマンの足で蹴り上げられた。
「ぐぉ!!!」
身体が上下に跳ねる。そして落ちてきたところで再び急所を跳ね上げられた。
「はひっ!!」
両手両足を動かすが、ロープが絡まっていてどうにもできない。ただ急所を差し出して蹴られるしかない。
強い蹴りではないが、連続で何度も何度も蹴られると徐々に痛みが蓄積していく。
バシッ「ぁあ!!」
バシッ「うぉ!!」
バシッ「ぉぉ!!たま…」
モッコリとした男の膨らみは蹴られるたびに上下にバウンドしてブルンと揺れた。
薄手のパンツを履いているせいで衝撃がダイレクトに急所に伝わる。

十数発くらった時には大五郎の金玉は腫れ上がり、彼はロープに力なくぶら下がっている状態だった。

「はあ、はあ…」
全身にじっとりとした汗が流れる。
朦朧とした意識の中、客達の嘲るような笑い声が頭の奥で反響していた。

マスクマンはロープから大五郎を放し、リング中央で自らスリーカウントを行った。

大五郎は度重なる急所攻撃で、もう試合を続ける気力と体力が無かった。あっさりと決まってしまった。

大五郎は負けて、股間を押さえながら控え室に帰っていった。

控え室のベンチに座って股間を押さえていると石井がやってきた。
「おう高田。今日の試合はどうだった」
大五郎はそっけなく返事をする。
「あ、ああ。負けちまったが、客からしたらあれで良いんだろう?」
そう言って、石井が持ってきた氷水で股間を冷やす。

「ああ、客もバッチリ喜んでいたぞ。特に金玉をカチ上げられた時の悶絶姿が評判良くてよ、次も見せてくれだってよ」

"勘弁してくれよ"
大五郎は心の中でそう呟いた。初めはただ単にリング上で戦えば良いだけだったのだが、徐々に客達は要求するようになってきた。
どうやら大五郎が痛めつけられる姿がお気に入りなようだ。

「やられるのは慣れてるから良いけどよ、最近金的ばかりじゃねぇか、勘弁してくれ」
「客が望むなら仕方がないだろう?そうだ、これが今日のファイトマネーだ」
封筒を受け取って大五郎は首を傾げた。
「おい、今日はやけに多いじゃねぇか」
石井はバツの悪そうに下を向く。
「すまん高田、お前に会いたいって客が居てよ、わかるだろ?な?」
大五郎は石井の言ってる意味を理解した。そして金の意味も。
「呼んできてくれ」
大五郎がそう言うと石井は控え室から出て行った。
その間に部屋の中央のベンチを隅に動かす。

しばらくすると控え室の扉が開けられた。
「やっぱりあんたか」
閉口一番、大五郎はそう言った。

趣味の悪い紫のスーツに下品な顔つき。上客の渡部だ。
「私のことを覚えてたんだな。君は物覚えが悪いから忘れられてると思っていた」
「けっ!!」
嫌味な野郎だ、大五郎は彼に嫌な思い出しかない。試合後に大金はたいてコンタクトを取ってくるのは渡部くらいだろう。忘れたくても忘れられねぇ。
「今日はなんだ?フェラか?ファックか?」
大五郎は嫌味を含めてそう言った。実際にされた事は無いが、いつもそれに近いことを要求される。

渡部は大五郎のゴツゴツとした身体を舐めまわして見た後、近づいてきた。
そして大五郎のガタイを触り始めた。
「前に来た時はいつだったか、その時よりもデカくなってるな」
そう言いながら、渡部は大五郎のパンパンに張った腕や肩、背中に手を滑らす。

大五郎は野郎に触られる事を不快に思いながらも黙って動かずにいた。
分厚い筋肉を触ると渡部は満足そうに微笑む。そして大五郎の背後に来ると、脇の下から手を伸ばし、盛り上がった大胸筋を両手で掴んだ。柔らかい感触が渡部の手の中に広がる。

「なかなか揉み応えがあるな」そう言って胸を数回揉んだかと思うと、大五郎の両乳首を触り始めた。
しかし大五郎はそれに対して一切の反応を示さなかった。

「やはり感度はないか、今度ここも開発してやろう」
「おい、今日は何のつもりで来たんだ」
大五郎がそう問うと、渡部は胸から手を離して大五郎の前に周った。

そして何も言わずに大五郎の黒いパンツの膨らみを掴んだ。
大五郎は少し焦ったがすぐに平静を取り戻した。
「この中に蒸れた睾丸が2つとチンポが入っている。そうだろう?」
「あ、ああ」
急所を掴まれるのは良い気分ではない。だが大五郎は拒否できなかった。
「今日は乳首でもチンポではなく、この睾丸を責めたい」
「わかった」
どうせ断っても無駄だとわかっている。大五郎は覚悟を決めて握りやすいように股を少し開いた。

それに応えるかのように渡部は手の力を徐々に強め、パンツ越しに大五郎の金玉を握り込み始めた。
「大ぶりで弾力のある良い睾丸だ」
そう言って渡部は大五郎の右玉を掌の中に収め、全方位から圧力を加え始めた。
「あぁ、ぐぉっ!!」
「どうした?まだ全然力を込めてないぞ?」
「おぉ!?うぉ!!」
試合で散々やられた金玉は、いつも以上に敏感になっている。
普段ならば耐えられる握り込みも、今はキツかった。

金玉を圧迫される痛みに大五郎は押されて後ずさりする、そのまま渡部に押されて金属製のロッカーにぶつかった。

「私は昔から君を見ていた。そして最近気が付いたんだ」
「うぉっ!!」
大五郎は金玉の内側から弾け飛ぶような激痛に顔を歪めた。
指が睾丸に少しでもめり込むだけで激痛が走る。
立っていられない痛みに、大五郎は必死に耐えた。

「私は君が急所攻撃で悶絶する姿に興奮した。是非ともこの手で握り潰したい」
万力のように右玉がキリキリと潰され、内蔵を潰されるような痛みが大五郎を襲う。
彼は胸に引きつりを走らせ、悶え苦しんだ。
骨太の腕をバタバタと動かしてロッカーにぶつける、そして渡部の手を掴んだ。
「つ、潰れる。たま、つぶれる…おぉぉぉぉ」
本気で潰される。そんな恐怖に、大五郎は抵抗するが渡部の手を放すことはできない。
それどころか渡部は更に大五郎の金玉を責め立てた。
渡部は掌でがっちりと金玉を掴みながら、親指と中指でタマの中央を押し潰した。
「男前の顔が苦痛で歪むのが大好きでね。もっと喚いてくれよ」
「ぐっ、外道め…」
大五郎は心底見下した。こんな男に屈してたまるか、そんな気力で玉責めに耐え抜く。
大五郎の右玉は渡部の指で楕円形に潰されて、地獄のような激痛を彼に与えていた。
痛みで意識がぶっ飛びそうだが、睾丸を握られている状況はなかなか失神もさせてくれない。
徐々に限界まで追い込まれる。
口をだらし無く開け、よだれを垂らし、足腰に力が入らなくなる。
渡部は大五郎の右タマを探り当てて、集中的に握り込んだ。
「どこが痛いんだ?言ってみろ」
「き、きんたま…ぐぉっ!!み、右のタマがヤベェ…はうっ!!」
「右か、ならばもっと集中的にせめないとな」
「はっ!!はぅぅ!!」
右タマの集中責めに大五郎は男の意地で耐えた。

「次はどっちを握られたい?右タマか?左タマか?」
渡部は手のひらの金玉から力を抜いた。しかし、悶絶以外の大五郎の反応が無いのを見ると再び右タマだけを握り込み始めた。
タマに指をめり込ませるたびに、大五郎はゴツいガタイをびくんびくんと震わせる。それを渡部は楽しんだ。
「うごっ!!ぐぉっ!!タマが!!」
「おらっ!!どうして欲しいんだ?あ?」
「くそっ!!あぁぁぁ…」
「右がいいか?左がいいか?」

そんな問いに大五郎は息も絶え絶えに答える。
「み、右じゃなく左をやってくれ!!」
右タマの集中狙いに気が狂いそうになる。だが、左タマをやられたところで結局は苦しむことになった。

潰されそうで不安になるが、渡部を信用するしかない。脳天につき上がる激痛に耐えていればいつかは終わる。そう大五郎は信じた。
痛むのは握られている金玉だけじゃない。下っ腹に鈍痛が蓄積され腹を殴られるのと同じぐらい痛み、何故か背中も痛んできた。

筋肉をヒクつかせて、野太い悲鳴をあげて耐える。
もうダメだというところで渡部は手を放した。

大五郎は支えがなくなったことでロッカーを背にズルズルと落ちた。
「あ、ぁぁ、あ…」
ロッカーにもたれ、荒い息で股間を押さえる。金玉が異様に腫れて、パンツ越しにも肥大化したのが見てわかった。

そんな大五郎を渡部はニヤニヤと見下ろす。野獣のような身体のレスラーが、今は小さく見える。痛みを和らげるために両手で股間を抑える姿は滑稽だった。

しばらく大五郎の姿を眺めた後、渡部は言った。
「ここがリングだとすると私の勝ちだな」
大五郎はギロリと渡部を睨みつけた。その眼差しには憎しみが込められている。
大五郎が金的によって弱っていることを良いことに、渡部は更に煽る。
「睾丸が大きいと痛みも大きいだろう。これからの試合はもっと辛くなるだろうな?」
「クズが…」
「そう睨むな、あと1発金蹴りしたら私は帰る」
「俺をまだ追い込むつもりか」
「たった1発だ、耐えられるだろ?」
その言葉に大五郎は股間を押さえてながらヨロヨロと立ち上がった。
「本当に1発だけだな」
「ああ、その代わり次の試合も頼むぞ」
あと1発、あと1発だ。
大五郎は気力で股を開き、急所を無防備にした。
吐き気がして金玉と下っ腹が痛い。だが、ズルズルと金蹴りを後に伸ばすよりは早く渡部を追い返したかった。

「いくぞ」
渡部が蹴った蹴りは、腫れ上がった大五郎の股間を押しつぶした。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
野獣のような咆哮が部屋に響く。目玉が飛び出そうなくらい目を見開いて大五郎は頭から床に落ちた。
大きな身体を丸めて股間を押さえ、床を七転八倒する。
「あ、あっ、あぁ…」
膝を曲げて太い脚を振った。
よだれを垂らし、鬼の形相で悶絶する。

「さすがに鉄プレートを入れるとキツイみたいだな」
渡部のその言葉は大五郎には届かない。
潰れてはいないものの、男にとっては拷問である金的を食らって大五郎はしばらく控え室で悶絶していた。

ようやく座れるようになる頃には渡部は消えていた。
ベンチの上には金の入った封筒だけ置かれていた。

そして石井が戻ってきた。
「大丈夫だったか」
「ああ、まあな」
大五郎はやせ我慢をした。
「無理にやられなくても良いんだぞ。試合だけ出て、後は断る事も出来る」
「言っただろ大丈夫だって」
石井はそれ以上は何も言ってこなかった。大五郎にもわかっている、この場所で戦い続けるには客の言う事が絶対だ。

闘技場を後にし、大五郎は股間を押さえながら帰路についた。歩き方もぎこちなく、金的の痛みが治まっていないのは明白だった。
住宅地を抜けてヤンキーがたむろするコンビニを抜けて、ようやく家に帰ってきた。

ボロアパートの一室が大五郎の住まいだ。キッチンの電気をつけると部屋で寝ている息子の後ろ姿が見えた。

大五郎はそっと寝顔を見て、彼は壁を背に腰掛けた。
「はぁ…」

戦いはここでは終われない。息子のために。


<|一覧|2.巨漢とチビ>

TOPへもどる