悟空危うし!鉄鋼魔人の恐怖!



「おっ、村があるぞ。」
険しい山道を歩いてきた悟空の前に、小さな村が現れた。
「静かなトコだな~、誰もいねのかなぁ。」
ひっそりとした村の中をキョロキョロしながら歩く悟空。
五分もしないうちに村の反対側についてしまった。
そこからのびる道は森へと続いているようだ。
「もう、出口かぁ。ホンとにちっちゃい村だなぁ。」
悟空は村を振り返った。やはり、誰もいないようだ。
「誰もいねぇみてぇだし、行くか。」
あきらめて、先へ行こうとする悟空を呼び止める声がした。
「ま、待ちなさい坊や!」
「うん?」
振り返ると、一番近くの家のドアが半分だけ空けられ、そこから
怯えた顔をした老人がこちらを見ていた。
「なんだ、誰もいねぇのかとおもったぞ。オラに何かようか?」
「坊や、悪いことは言わん。すぐに引き返すのじゃ。」
「引き返す?引き返せって言われてもオラ、修行の旅をしてるんだ。引き返えしたら意味がねえぞ?」
「修行の旅?坊やがかね?」
「そうだ。オラ、もっともっと強くなるんだ!」
「ほ~・・・坊やがねぇ・・・」
老人は、半信半疑で自分の孫のような年齢の少年をしばらく見ていたが、思い出したように言った。
「いかに修行といっても、あの森だけはイカン!危険すぎる。」
「何でだ?」
必死の表情の老人とは対象的に、ポカンと緊張感のない顔で悟空は尋ねた。
「あの森には鉄鋼魔人と言う、恐ろしい化け物が住んでいるんじゃ!」
「テッコウマジン?」
「そうじゃ。岩を食い、身体が鉄の様に硬く、斧も鉄砲もきかん化け物じゃ。今まで何人もの若いのが、退治しようとしてやられてしまった。坊やもすぐに引き返したほうがいい。」
「へ~・・・。よし、オラがそいつを倒してやるぞっ!」
「はっ?なっ、何を言っとる!無理に決まっておろうが!」
「心配すんな!すぐにオラが倒してきてやっから!」
「おっ、おい!待て!待つのじゃっ!!」
老人の止めるのも聞かず、悟空は森へと楽しそうに走って行った。

「お~い!テッコウマジ~ン!出てこ~い!」
悟空は走りながら両手を口に当て、大声で呼んだ。
「お~い、どこだ~!テッコウマジ~ン!」
すると、森の木々をなぎ倒しながら、銀色に光る大男が現れた。
「誰だ!熊も恐れる俺様をわざわざ呼ぶ馬鹿は?」
「おっ!?お前がテッコウマジンか?」
別に驚くようすもなく悟空は目の前に現れた大男を見上げた。
全身筋肉で覆われた銀色の身体は、まさに鋼のようにかたく、身長は2メートル近い。
足は短くがに股だが、腿などは悟空の両手が周らないほど太い。
腕は足に比べ長く、丸太の様に太かった。握った拳はハンマーのようだ。
胸は広く、筋肉で盛り上がり、胴もドッシリと太い。腹筋も見事に割れている。
その身体を見せびらかすように、上半身むき出しで、黒いビキニパンツだけを身に付けている。
「なんだ?ガキじゃねぇか?」
ちょっと戸惑ったように鉄鋼魔人は、目の前の子供を見下ろした。
「ガキ~、お前か!俺様を呼びやがったのは?!」
魔人は屈んで大きな四角い顔を、その子供に近づけた。
だが、子供は怖がるでもなく笑顔で言った。
「そうだ、お前悪い奴らしいな?」
「あ~ん?だからどうした?まさか、お前が俺様を倒すとか言うんじゃねえだろうな?」
「そうだ。オラがオメェをぶっ飛ばすぞ。」
「がぁっはっはっはっ!!おもしろい!!言っとくが俺様はガキだとて容赦はせんぞ?」
「心配すんな。オラも容赦はしねぇから。」
そう言って悟空は構えた。
悟空を見下ろす魔人のコメカミが、ぴくぴくと痙攣している。
どうやら本気で頭にきた様だ。
「ガッ、ガキ~・・・!ぶっ殺すっ!!」
魔人は渾身の力を込めて、腕を振り下ろした。
だが、すでにそこには子供の姿はなかった。魔人の拳は空を切り、地面を叩いた。
どっす~んっ!!
魔人が地面を叩いた衝撃で一瞬、森全体が揺れたようだった。
「ひゃ~!すっげぇ力だな~。あんなのくらったら、ひとたまりもねぇぞ。」
いつの間にか悟空は近くの木の上にいた。
「でも、当たんなきゃ意味がねぇんだな。」
目標を見失いきょろきょろする魔人目掛けて、悟空は木の上から跳んだ。
「でぃや~っ!」
ガッキーンッ!!
悟空の蹴りが魔人の首筋にヒットした瞬間、金属を棒で打つような凄い音がした。
「イッテェ~!痛ってってててっ・・・!」
だが、足を押さえて、派手に痛がっているのは悟空の方だった。
蹴られた方は、まるで蚊にでも刺されたように平然としている。
「いって~!ホンとに鉄みたいに固い奴だな。おっ~、痛ってぇ・・・」
「ほお~。やるじゃねえか。だが、俺様にはきかねぇなぁ。」
余裕の表情で魔人は悟空を見下ろした。
「まだまだ~、これからだっ!」
何とか立ち上がり、再びかまえる。魔人は立ったまま動かない。
「いっくぞぉ~っ!」
悟空は目にも留まらないスピードで、鉄鋼魔人までの距離を一気に詰めると、攻撃を繰り出した。
「えぃや~っ!えいっ、えいっ、えいっ、えいっ、えいっ・・・・・!!」
カンッ!コンッ!ガンッ!カンッ!・・・・!
悟空が攻撃する度に森に金属を打つ高い音が響いた。
何百回響いただろうか。ついに悟空は疲れはて、倒れてしまった。
だが、魔人は平気な顔をしている。銀色の体には傷一つ付いていない。
「ぜ~っ、ぜ~っ。なっ、なんて奴だ、オラの攻撃がぜんぜん通用しねぇぞっ!」
悟空は大きな口から舌を垂らし、肩で息をしている。かなり疲労しているようだ。
「どうした?もう終わりか?」
鉄鋼魔人が歯を見せて笑う。
「くっそ~、どうっすかな・・・」
ゆっくりと近づいてくる魔人を睨みながら、何とか立ち上がった悟空。だが、その顔には、あせりの色が出ている。
「さ~て、今度は俺様の番だな?」
魔人のパンチが悟空を襲う。
辛うじて一発目はかわした悟空だったが、魔人はすかさず裏拳を放った。
「しまったっ!」
予想よりすばやい魔人の攻撃に悟空は反応することが出来なかった。
ドッコ~ンッ!!
大地をも震わす攻撃をまともにくらい、森の木々をなぎ倒しながら数百メートルほど吹っ飛ばされる悟空。
「あがっがっがっが・・・」
大きな岩に背中からぶつかり、悟空は地面にずり落ちた
魔人の一発で悟空はもう、ボロボロになってしまった。仰向けの足がピクピクと痙攣している。
「こんな所まで、吹っ飛んでたか。」
ゆっくりと追いついてきた魔人が瀕死の悟空を見下ろした。
「ほぉ~っ、俺様の一発を喰らって生きてたのはお前が始めてだぞ?」
そう言って大きな足で、仰向けの悟空を踏みつけた。
「もっとも、あれで死んでた方が楽だったろうになっ!」
ドカンッ!ドカンッ!ドカンッ!・・・
魔人は満身創痍の悟空を何度も何度も踏みつける。
魔人に踏みつけられ、なす術も無く地面にめり込んでゆく悟空。
「オラッ!オラッ!オラ・・・ッ!」
攻撃が止んだ頃には、悟空の身体は完全に地面にめり込んでしまっていた。
「がぁっはっはっはっ!思い知ったかっ!!」
地面にめり込んだ悟空の上で鉄鋼魔人の笑い声が高らかに響いた。
「あがっ、あがが・・・。くっ、くそ~・・・どうしたらいいんだ・・・」
薄れ行く意識の中で、悟空はまだこの怪物を倒す方法を考えていた。
その時、霞む悟空の視界が黒い物を捕らえた。
「うん?・・・あれは・・・?」
悟空は眼に力を集中した。
それは、魔人の股間だった。唯一魔人が身に着けている黒いパンツの股間部分が二つ、丸く膨らんでいる。
「そっ、そうだっ!よっ、よ~し・・・もう、これしかねぇっ!これで駄目ならオラの負けだっ!」
悟空は最後の力を振り絞り、めり込んだ地面から立ち上がった。

立ち上がった悟空を見て魔人は信じられないと言う顔をした。
「ばっ、馬鹿なっ!」
ぼろ雑巾のような身体で悟空は構えた。
「このガキ~っ!そんなに死にたいなら、殺してやるっ!!」
魔人は牙をむき出し咆えた。こめかみには血管が浮き出し、ピクピクと脈打つ。
「ウオォォォッ!!」
鉄鋼魔人は両手を高々と持ち上げ、力を込めた。悟空をぺしゃんこにするつもりだ。だが、その股間はがら空きであった。
「今だっ!!」
悟空は全身のバネを使い、まるでロケットのように一直線に魔人の股間目掛けて跳んだ。悟空の石頭が魔人の股間に突き刺さる。
キ~ンッ!!
高く澄んだ金属音がした。
「いっつ~っ!!」
悟空が頭を押さえた。
「コイツ、キンタマまで鉄みてぇだぞっ!」
だが、男の急所であることに変わりはなかったらしい。
魔人は両手で股間を押さえ転げまわっている。
「はっ、ハヒッ!こっ、このガキィッ・・・」
魔人の声は裏返り、震えている。
「おっ!やっぱ効いてるみたいだぞ!」
勝利の糸口を掴んだ悟空は俄然元気になった。
背中に背負った如意棒を掴むと、歯を見せてニッカと笑う。
「ここはどうだ!」
手にした如意棒を無防備な魔人の肛門に一気に突き刺した。
ズボッ!
「ぬおおおおッ!」
肛門からの新たな痛みに、魔人は咆えた。
「よっこいしょっ…っと」
魔人を刺したまま如意棒を肩に担ぐと、如意棒のもう一方の端を地面に垂直に突き刺した。
「あっ、あひぃ~っ!」
もがけばもがくほど、肛門と腸が焼けるように痛んだ。痛むのが解っていても、もがかずにはいられなかった。
ばたばたともがく魔人をニヤニヤしながら眺める悟空。
魔人の重みで如意棒はドンドン深く、地面と魔人の腸にめり込んでいく。
「ぬあぁぁぁぁっ!」
如意棒は魔人の足が付く長さまでめり込み止まった。
今、魔人の全体重は両足と肛門の三点で支えられている。
その魔人の両足を、悟空は軽く蹴飛ばした。
「ぬおおおぉぉぉぉっ!」
魔人は仰け反り、再び全体重が如意棒に架かる。
慌てて魔人が両足を付いたが、如意棒はさっきよりもめり込んで、
魔人は中腰の姿勢で耐えなければならなくなった。椅子に座るような体制になってしまった為、殆どの体重は如意棒に架かっている。
肛門への負担を最小限にするために、魔人は股を大きく開き、長い両腕を後ろへ回して、如意棒を肛門に近いところで掴んだ。
真っ赤な顔で必死に耐える魔人の股間はがら空きで、睾丸がくっきりと見えている。
悟空はトコトコと魔人のがら空きの股の間まで来ると、黒いパンツ越しに浮き出している、魔人の二つの急所を軽くなでた。
「へへ~…、でっけぇ、キンタマだなぁ~。」
「なっ、おっ、おい坊主!お、お前まさかっ…!」
悟空は中腰でなお、悟空を見下ろすほどの巨躯の持ち主を見上げ、ニカッ、と笑うと目の前の膨らみに向かって正拳突きを叩き込んだ。
キ~ンッ!
「はうっ!」
魔人は慌てて股間を守ろうとして、両手を離した。
ズズッ!
「ぬあぁっ!」
両手を離したとたん、如意棒が肛門にさらに食い込み、反射的に両手を戻した。
そこへ再び正拳突きを放つ悟空。
キーンッ!
高く澄んだ金属音が森に響く。
「ぐぇぇぇっ!タッ、タマがあぁぁぁっ!」
大股をひろげ、どうする事も出来ない魔人。
悟空は軽く腰を落とし、息を大きく吸い込み止めた。
「いっくぞ~っ!今までのお返しだっ!!」
「ひっ!よっ、よせ小僧っ!止めてくれ~っ!!」
眼にも止まらないスピードでパンチを繰り出す悟空。
「オリャリャリャリャッ・・・・!!」
キンッキンッキンッキンッキンッキンッ・・・
「ヒギャッ、ゲッ、ヒッ・・・」
森の隅々まで、悟空が魔人の睾丸を打つ高い金属音が鳴り響き、魔人の悲鳴が後に続いた。
何百回、いや何千回か、魔人の睾丸を打ち鳴らしたところで、悟空はようやく攻撃の手を止めた。
「お~いてぇ・・・ホンとに硬てぇキンタマだな。」
赤く脹れてしまった自分の拳を見ながら悟空は言った。
魔人は半分意識が無いようだ。両手でしっかりと如意棒は掴んではいるが、白目を剥いている。
「ヒィ・・・・」
と、譫言のように繰り返し、その口の端からは涎が垂れている。
「そろそろ、しめえにすっか・・・。」
悟空は辺りをキョロキョロと見回した。
「いいのがねぇなあ・・・。そうだ!さっきの村でなんか借りてくるか!」
「キント雲や~いっ!」
悟空の呼びかけに答えるように空の彼方から金色の雲が飛んできた。
「よっと、コイツは・・・大丈夫か。」
キント雲にまたがりながら、一瞬、鉄鋼魔人を見たが、逃げられることは無いだろうと、悟空は村へ引き返した。
「おーい、爺さんいるか~?」
「おおっ、坊や!無事じゃったか?!」
驚きと孫のような年齢の少年が無事であった事を知り、老人は嬉しそうだ。
「おうっ!ちょっとばかり、やばかったけどな・・・。」
「なんとっ!あの鉄鋼魔人を倒したのかっ!?」
「へへっ・・・」
得意げに指で鼻を擦る悟空を見て、老人は信じられないと言った表情だ。
「でさ、あいつ二度と悪さできねぇようにすっから、何か硬くて丈夫な棒みたいなもんなぇかな?あいつのタマ固ってぇんだ。」
「へっ?タマ?」
老人には何のことだか解らないようだ。
だが、悟空の欲しているものには心当たりがあるらしかった。
「ちょっと、まっとれよ。」
そう言うと、家の奥から重そうな大金槌を引き摺ってきた。
「ふぅ~、年寄りにはちと重いのう。これなんかどうじゃ?ちょっと重いが、村を柵で囲った時に、杭を打つのに使った大金槌じゃ。」
老人が重そうに持ってきた大金槌を、軽々と持ち上げると悟空は満足げにうなづいた。
「おうっ、これならぴったりだ。ちょっとかりるぞ。」
言うが早いが、悟空はあっという間にキント雲にまたがり飛んでいった。 
「気を付けるんじゃぞ~っ!!」
老人は悟空に手を振った。
「おっ、いたいた。」
鉄鋼魔人は悟空が村へ戻る前とほとんど同じ状態のままだった。
「さてっ、しめぇにすっか!」
手のひらに唾を付け悟空は、借りてきた大金槌をしっかりと握った。
大金槌の頭を軽く魔人の股間にあてがい、位置を確認すると野球のバットのように構え、魔人の二つの膨らみ目掛けて、叩き付けた。
ガッキ~~~~~ンッ!!
金属同士のぶつかり合う高音が森の木々を揺らした・
「ふんぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!」
獣のような叫び声を上げる、鉄鋼魔人の大きな口から、鶏の卵大の金色の玉が一つ飛び出した。
「もういっちょっ!!」
コッキ~~~~ンッ!!!
「ぐぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
金色の玉がもう一つ魔人の口から吐き出された。
「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ・・・おっ、俺様の・・・俺様の・・・キッ、キンタマ・・・キンタマがあああああぁぁぁぁっ・・・!!」
魔人の口から吐き出された金色の玉を一つ拾い上げるとしげしげと眺める悟空。
「ひゃ~、コイツのキンタマ、ホンとに金色してるぞっ!!」
それは金色に輝く魔人の睾丸だった。魔人の睾丸には、物珍しそうに眺める無邪気な悟空の顔が映っている。
なにげに悟空は手にした魔人の睾丸を指で弾いてみた。
キ~ン・・・
「あうっ!」
タマの無いはずの魔人が呻いた。悟空はためしにもう一度指で弾いてみた。
「はうっ!」
どうやら、魔人の身体を離れてもこの金色の睾丸と魔人は何かでつながっているようだ。悟空はもう一つを拾うと、互いの睾丸を何度かぶつけ合った。
キ~ン・・・キ~ン・・・キ~ン・・・キ~ン・・・
「はうっ、ひっ、はひっ・・・」
「なるほどなぁ・・・。」
悟空は満足げにうなずいた。

こうして、村人を困らせた鉄鋼魔人は退治された。両方のタマを失った魔人は、タマ無し魔人と呼ばれるようになり、また、魔人の二つのタマのうち、一つは悟空が、もう一方は村に預けられ、これまでの悪行の報いとして、一年に一度の村の御祭りには、村人全員でそれぞれ好きな武器、道具で魔人の金色の睾丸を打ちすえ、その度に森のどこからか魔人の悲鳴が聞こえてきたと言う。

めでたし、めでたし

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