砂浜の用心棒2-1.挫折と特訓



ライフセーバーの仕事はビーチの監視だけではない。溺れた人の救助の訓練も、応急処置の訓練もしなければならない。しかし、先週の店の一件以降、彼はどうしても仕事や訓練に身に入らなかった。まるで自分の存在価値自体を否定されたように感じてしまった。

「おい、気にすんなよ。たかが一回の失敗じゃねぇか」
そう気さくに声をかけてくれたのは二年先輩の江城だった。山内とは違って身体は大きくないが、ライフセーバーの水着がよくにあっている 。割れた腹筋と褐色の滑らかな身体、更に山内にはない爽やかな笑顔を持っていた。

今日も休憩時間に、ベンチに座って落ち込む山内を心配して声をかけてくれた。

「そうっすかね」
「おう、お前の事を悪く言う奴は、ただの僻みで言ってるだけだ。気にすんな」
隣に座って、山内の肩に手を回すと男同士の肌が触れ合った。

「でも俺自信なくしたっす」
「それくらいでか?」
「俺なんかが用心棒なんてしていいんすか?」
「お前みたいなのはな、喧嘩しなくても相手がビビれば勝ちなんだよ。一度負けただけで女々しくなんじゃねぇよ」
そう言われて山内は黙り込んだ。
「そのおっさんには金玉やられたから負けたんだろ?」
「うす」
「ならよ、鍛えたら良いんじゃねぇか?」
「鍛えるって…?」
山内が言おうとした瞬間、彼の股間がムンズっと掴まれた。

「うおおぅ!?」
「股閉じんなよ?」
いつもの冗談だと思ったが、江城の顔は真剣だった。
「また金玉やられて負けると思うから自信が持てねぇんだろ?ならよ、俺が克服させてやるよ」

ベンチに座る江城が、ゴリマッチョな山内の急所を掴んでいる。山内の特注競パンは、彼の股間の大きさに合わせて作られているため、掴みやすかった。

「ほんと、身体もデカけりゃタマもデケェな」
「う、うぉ」
「いいか?このまま10秒間握り込むからな。俺の手を掴んだり逃げたりすんじゃねぇぞ。もし耐えられねぇんなら望み薄だ。用心棒なんてさっさと辞めちまえ」
江城は山内の顔を覗き込んだ。厳つい顔は不安でいっぱいだった。それでも彼はキツく言い放った。
「いいな?」
「う、うす。お願いします」

江城は、手の中にある柔らかい金玉を、力を込めて握り込んだ。
そうするとプリプリの感触で押し返された。
「うぉっ!!」
「良い声出せよ」
「ぐぉっ!!タマ…!!くそっ!!」
山内は顔を仰け反らせた。
脚がガタガタと震え、身体も自然と動いてしまう。
「柔らけぇチンポとタマだな」
江城は山内の股間を弄って、2つの玉をガッチリとホールドした。
「耐えろよ!!やられた悔しさを思い出せ」
「う!!うす!!」

急所をキューっと握られる苦しみが、徐々に増していき、潰されるかもしれない恐怖が沸き起こった。
「つっ!!潰れる!!」
「大袈裟だ!!あと5秒!!」

「無理っす!!無理っす!!」
山内は限界を感じて、江城の手首を掴んでしまった。
「掴むなって言っただろ!!」
江城に怒鳴られるが、急所は握られたまま解放されていなかった。

「うおっ!!くぉ!!」
山内の分厚い胸筋と腹筋が収縮する。
金的に耐え抜くと決めたはずだが、どうしても江城の腕を離すことができない。

江城が手を離した瞬間に、山内は荒い呼吸で必死に股間を押さえた。
「おぉ…お……おぉ…」

江城は、座って悶絶する山内を冷たい言葉で突き放すと、ベンチを立った。
「期待はずれだな、根性がねぇなら用心棒やめちまえ」

「先輩…」
すかさず山内は呼び止める。
「なんか用か?」
「俺…根性もねぇし、キンタマ…も弱ぇっす」
顔を苦痛で歪ませながらも、必死に言葉に出す。
「でも……だからこそ…俺を男として叩き直して欲しいっす。金玉と根性鍛えて欲しいっす!!」

本心から出た言葉だった。
「生半可な気持ちじゃねぇだろうな?」
「うっす」
「わかった。じゃあ、お前の本気を確かめてやる。そこに立って股を開いてみろ」

江城の指示通りに、立って股を開いた。
江城は身長185cm体重100kgの巨漢の裸体を眺めたあと、股間に目をやった。

毛むくじゃらの太ももを大きく開けて、急所を無防備にさらけ出した。

「記念の一発だ。気合い入れろよ!!」
「うす!!」

その掛け声と共に、江城は足を振り上げた。
「ぐおぉぉおぉ!!」
山内の急所は爪先に押し上げられてひしゃげた。

江城の厳しいところは、手加減を一切しないところだ。
彼は思い切り蹴り上げるだけではなく、インパクトの瞬間に睾丸を手前に引っ掻いた。

裏玉を強打した山内は、耐えきれずにベンチの下にへたり込んだ。米下にやられた記憶がよみがえる。

「うぉっ!!うぉっ!!おれの…キンタマ……!!」
上半身をベンチにもたれ掛かけて、左手で股間の膨らみを押さえている。
顔を激痛に歪んで、低い悲鳴を漏らしていた。

「どうだ?金玉イテェだろ。死にそうだろ」
江城はしゃがんで、山内の顔を覗き込んだ。
「それでも根性鍛えるか?金玉鍛えられるか?」
「おぉ…うぉ……」

話せる状況じゃ無いのはわかっているが、江城は問いかけ続ける。
「痛みが引いたら苦しみなんて忘れちまう。今、お前の気持ちが聞きてぇ。どうだ?金的鍛錬続けるか?」
山内は途切れ途切れに答えた。
「う、うす…俺…やるっす…」

「よっしゃ、じゃあもう1発蹴ってやる。ほら立て」
「う、うっす…」

やると言った手前、嫌とは言えない。それに、何度も急所をやられるたびに男としての自覚が芽生えて来た。
耐えてやる。二度と馬鹿にさせねぇ。そんな気持ちで山内は立ち上がった。

「江城さん、お願いするっす」

とはいえ、金玉を握られた後の2発目の金蹴りは簡単に耐えられるものでは無かった。

「がはぁぁぁぁ!!!」

全力の蹴りを、睾丸だけで受け止めた。しかも引っ掛けるように蹴られたからたまらない。

衝撃によって競パンの中の双球が押し潰されて激しく揺れ動いた。

踵が浮き上がると、そのままキュッと股を閉じて、膝をついて前のめりに倒れこんだ。
今度は床に横倒しになった。

肩で息をして、痛みに必死にこらえた。
脂汗が全身を流れて小さな水たまりを作った。

「ぐむっ……う、ぅぅ…!!」
これが男の痛みか。これに耐えなければ弱いままだ。

そう思って、必死にこらえる。

必死に男の痛みに耐えようとする姿を、江城は満足げに見下ろしていた。

しばらくして、何とか上半身を起こせるようになると、山内は江城の肩を借りてベンチに座った。

痛みは引いたものの、ズーンとのしかかる苦しみは金玉だけでなく、下っ腹にのしかかっていた。

嫌な汗を全身に流して、はぁはぁと息を切らしている山内に言った。

「シャワー浴びてこい。この後は救助訓練だろ」
「うす」
「行っておくが鍛錬はいつやるかわからんからな、覚悟しとけ」

こうして、山内の金的鍛錬が始まった。


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