体罰

体罰


「やっときたか古賀」
「どうしたんですか。練習後に呼び出して」
古賀と先輩の田上。この二人以外は道場には残っていなかった。

「すまんなこんな時間に。だがお前に言っておきたい事がある」
「何ですかもったいぶって。予定があるんで早くしてもらいたいのですが」短 髪をかきあげ、めんどくさそうな態度を取る古賀。一方田上の方は古賀とは違 い道着に身を包んでいた。
「実はな、親御さんから苦情があったんだ」
「俺に苦情っすか?俺はちゃんとガキどもの指導をしてますよ。」「他の奴らこそ注意した方がいいでしょうに。てめえの事ばっかりな奴らをよぉ」
室内はじっとりとした空気が漂い、古賀のTシャツが汗で濡れる。
「まあ聞け。確かに道場一熱心なお前だ、その点は認める。だが不用意に生徒に手を出すのは許せん。たとえ素行の悪い子供でも嫌な話だが客は客だ」
この瞬間、何についての苦情か古賀は悟った。
「じゃあ田上さんは柔道を馬鹿にしたり言う事を聞かないガキを甘やかせってんですか」
「それは違う、暴力ではなく言葉で・・」
「暴力ではなく指導です。だからあんたは生徒に嘗められんだよ」
自分の指導方法を否定された怒りか、古賀は背を向けて話早々に道場を出ようとする。しかし田上はそれを許さなかった。
「なにするんすか先輩!!ん!!」
一瞬の出来事だった。80kgのガタイが宙を舞う、”ドシン”という大きな音と同時に部屋全体が揺れた。

「てめえ!!なにしやがる!!」
地面に叩き付けられた古賀はすぐさま起き上がり逆上して田上に掴み掛かった。
技の掛け合いというよりはただの喧嘩のようだったが、一枚上手の田上が内股からの寝技で怒り狂う古賀を押さえつけた。
「てめえは何にも分かってねえようだな古賀。今世間は体罰問題に敏感になっている。こんな状態でお前がもし生徒に怪我をさせたらどうなると思う」
「しるかよ、さっさと離せ」
押さえつけられ身動きできないながらも抵抗心だけは見せる古賀。

道場の入り口の方に人影が見えた。
「てめえの事しか考えてねえのは古賀、おめえだよ!」唐突に低い声が室内にこだまする。その声の主は同じく先輩である合川だった。
「田上、このガキを羽交い締めにしろ」
無理矢理たたされて締められた古賀はなおも、突然現れた合川を睨み、暴れる。
「てめえら、グルかよ!!こんな事してただですむと思うなよ」
「あのなあ。お前がもし子供を怪我させれば。この道場の信用は一気に落ちる。そうなれば閉鎖もあり得るんだぞ」
「知るかよ」
「わかった。なら身体で教えてやるよ。お前の好きな体罰というやつでな」

空を切り、合川の拳が古賀の顔面に吸い込まれるようにしてえぐった。
「っ痛!!」
皮膚が切れ血が流れる。
「おい、やるなら目立たないように腹にしろ」後ろで羽交い締めしている田上がそう言う。
それから体罰という名の暴力がしばらく続いた。無抵抗のままボディブローによってダメージが蓄積する。暴れながらも鋭い目つきで合川を睨み、そして悪態をついた。
「ち、さすがに打たれ強いな。ならば・・」
「ちょっと待て。まさか」
腹の更に下。短パンの中央目がけて拳が振り上げられる。勢いよくカチ上げられた彼の急所は、安易に今までの蓄積ダメージを追い抜いた。何かに取り付かれたように田上を押しのけて勢いよく倒れ込む。
「ほう、やっぱりお前も男だな」
そんな馬鹿にしたような声は彼の耳には入らず、うめき声をあげながら、両手で股間を押さえ、両脚を激しく動かして転げ回った。
「オウゥゥゥ・・」
眉間にしわを寄せて脂汗を流し、のたうつ姿は柔道をたしなむ彼らに取っては見慣れた光景だが、その姿は滑稽に映る。
しばらくの間そんな悶絶劇を見ていた田上だが。古賀の両脚を掴んで引っ張り上げた。
「ま、待ってくれ」
股間にを押さえる手は非情にも引きはがされ、己の急所を守るものは何も無くなった。
「今から何されるかわかってるよなあ」
恐怖に顔を歪め、必死に懇願する彼を尻目に全体重を乗せた膝がある一点に落とされた。
「!!!っふがぁあああ!!!!!!」
ビクッと大きく痙攣し、絶叫をあげて股間を激しく揉む。古賀は脚を曲げて駄々っ児のように畳の上を転がった。そして膝をついて四つん這いになり、痛みを紛らわす為か腰を振り出した。
「くそっ!!くそっ!!」
その怒りは二人に対してのものか、それとも終わらない男の強烈な痛みに対し てのものなのかはわからない。しかし彼はその筋肉質な身体を縮こませて必死 に男として戦っていた。

「何時まで寝てんだよ」
合川が古賀の胸ぐらを掴み、無理矢理立たす。
「ぁあ?!てめえ陰で俺の事言ってたらしいなぁ。最近調子乗ってんじゃねえのか?なんとか言えやコラ」
股間に手を当て、二人に怯えながらうつむく。
「今ここで脱げや」彼を突き放しそう言う。
「は?」
「は。じゃねえんだよ。パンツ一丁になれや、男だろ」
「タマを潰しても良いんだぞ・・断ればどうなるかわかるよな」
その言葉に恐怖し、二人の言う通りに逞しい身体を露わにし下着姿になる。

「おまえ、その下着なんだよ。ケツワレなんて履いてたんか」
白のケツワレ。それは動きやすいからという理由で履いていたのだが、その膨らみ、腫れ気味の彼の睾丸と相まって更なる加虐心が二人に芽生えた。
「しかしいつのまにかガタイでかくしたなあ。おいしっかり立てよ」
ケツワレ姿のガチムチ体型の古賀を笑う二人。恥辱を味わいながらも耐え忍んだ。
「しっかり立っておけよ。倒れるんじゃねえぞ」
そう一歩後ろに下がる合川。そして鋭い蹴りが彼の股間の膨らみを押し上げた。
「あ”・・あ”あ”・・」どうしようもなく倒れ込む古賀。だが怒号が飛ぶ。

「おら、さっさと立てよ」
今度は後ろから副睾丸もろとも蹴り上げられた。その衝撃は凄まじく、踵が浮く。
「グァオオオッ!!!!っふっぅ・・くそ・・・」
ケツワレに包まれたそのボリューム・・。そこをやられれば到底耐えられるはずも無く、やはり力なく倒れ込んでしまう。そして繰り返される金的リンチ。

その後も体育館倉庫で徹底して彼の睾丸が狙われた。
ポールを使ってタマを押しつぶし、綱引き用の縄にまたがせ神輿のように彼ごと持ち上げタマに食い込ませる。少しでも反抗するようならすぐさま急所に拳が飛んできて狭い空間に野獣のような絶叫が響いた。
そして鷲掴みにされ、じらすように徐々に力を強め、二つの睾丸を押しつぶしていく。

古賀の子供への行き過ぎた指導に対する制裁というのはただの理由付けでしか無い。彼の身勝手な言動や態度はたびたび他の指導員の顰蹙を買っていたが子供たちは彼の事を厳しくも優しい兄のように慕っていた。そして田上や合川もまたそんな彼の姿に嫉妬をしていただけなのである。

古賀は二人が帰った後も人知れず倉庫で悶絶していた。やっと解放されたとい う安堵はあれど、身体の自由は利かない。彼が帰路についたのは、次の日の朝 だった。



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