結婚式の余興

muscle
日々鍛え上げた身体を見せつける。

ホール内に響く大きな歓喜を聞きながら、彼はポージングをして筋肉を強調させた。

努力によって作り上げた肉体美を見せる瞬間が彼にとってこの上ない喜びだ。
「よっ!!デカイ!!」
「すっゲーー!!」
羨望の眼差しが自分に向けてくる。彼の鍛えた男のガタイを記録に残そうと携帯のカメラを向ける人は少なくない。
壇上の新郎新婦もそんな彼をにこやかな笑顔で迎えてくれる。

披露宴の余興は和やかに行われた。1人の少年が現れるまで…

鍛え上げた太い脚を強調するために、彼は赤いビルパンを履いているのだが、その中央は如実に膨らんでいて、子供にとっては筋肉以上に興味を引くものになってしまった。

ポージングを決めてエクスタシーに浸ってる彼は1人の少年が近づいていることに気がつかなかった。
少年はいつの間にかやってきて、彼の背後に回った。

周りの人々は少年に気が付いてヒソヒソと声を立てたが、肝心の赤いビルパンの彼はポージングに夢中で気が付かなかった。

少年はボディビルダーの彼の大きな背中を眺め、そしてポージングによってボディビルダーが腰を下ろし脚を開いた時、少年は彼に詰め寄った。

そして、ケツの間に揺れる、赤いビルパンの中の膨らみを何の躊躇もなく蹴り上げた。

パシン!!
「おおおぉぉぉう!!」
ホールの雑音の中に、1つの野太い悲鳴が聞こえた。
少年の爪先は見事に赤いビルパンの中の弱い場所を叩き上げ、グニャリと押し潰した。
ボディビルダーの彼にとって、視覚外からの会心の一撃であった。
彼は絶叫して前に倒れこみ、膝を曲げて全身の筋肉を痙攣させた。
そして横倒しに倒れこんで、赤いビルパンを押さえて亀のようにうずくまった。
子供の蹴りといえども、しっかりとキンタマを直撃させれば、彼のように大の大人を倒すことができる。


一瞬の出来事に周りがざわめき始める。人々はその瞬間を見ていた。少年が今の主役の急所を蹴り上げたのだ。
そして間を置いて、人々は再びパシャパシャと2人を撮り始めた。

大きな身体を丸めて、股間を押さえて悶絶しているボディビルダーと、誇らしげな態度の小さな子供の2人がカメラに収められる。

「撮らないでくれ」
そんな声も出せないほどの痛みに悶絶している中、ボディビルダーは猛烈な羞恥心に包まれた。
わけも分からずいきなり急所攻撃を喰らい、倒れている。横だおしの彼の視線に少年が写った事で、彼は事を理解した。

こんな大勢の前でビルパン一丁で股間を押さえて悶絶するとは。しかも子供にやられて。

普段裸で注目を浴びる彼だが、こんな姿は見られたく無い。
自分の身体は男らしさの象徴であり、力強く誰もが憧れるもののはずだ。
しかし、たかだか子供の蹴りに、彼は倒れこみ、股間を押さえて悶絶してしまう。
鍛えようのない場所を狙われてしまえば、彼のように筋肉の鎧をまとっていても仕方ない。
男だからこそ、今悶絶しているのだ。激痛を彼は噛み締めた。

「がぁぁ…」
金玉に毒でも入れられたような気分になる。
股間を押さえ、額から脂汗が吹き出して床に落ちる。
会場中の視線が、顔を青ざめて股間を押さえて苦しむ彼に集中する。
腹を滝に打たれているように重く痛む。

彼は身体をグルンと回転させ、頭と両膝をついて、ケツを周りに向けながら、脚をバタバタとさせて、痛みを紛らわせた。

「おっ…おぉっ…ぉ」

恥ずかしさをこらえ、彼は痛みを抑えるために惜しげもなく男の悶絶姿を披露する。
今日は男らしさをアピールする場だったのだが、別の意味で男らしさを見せつけてしまった。
男ならではの痛みに彼は苦しめられ、そしてはずかしめられた。

会場中が雄の悶絶ショーで騒めく中、ホールのスタッフが何人かやってきた。
「手を貸しましょうか」
「うっ…お、お願いします」

彼は玉のような汗を全身にかき、自力で立ち上がれないほどに弱っていた。
数人に抱きかかえながらなんとか立ち上がった。
情けない気持ちと、早くここから去ってしまいたい気持ちが彼を動かす。

周りからの心配の視線や、クスクスと笑う嘲笑の中、彼はじんじんと痛む股間を押さえながら控え室に帰って行った。
彼にとっては一生の忘れられない思い出になった。


muscle

結婚式では散々な目にあった。子供に急所を蹴られ、余興を台無しにされた。 最悪なのは友人である新郎がすごく怒っていることだ。
あの日は謝った、そして仕方のないことだったと弁明もした。だが、結局あいつは納得してくれず、改めて俺に謝罪に来るように要求してきた。
大学時代の友人であり、恩もある。粘り強く説得すればきっとわかってもらえる。俺はそう信じた。

俺はこの日、大学時代の友人でもある金田吉弘の待つ部屋に奥さんに案内された。
「荷物はここに置いておいてください。私はこれから用事があるのでこれで失礼します」
俺が荷物を下ろすと、耳打ちをされた。
「あと、あの人怒ってますから気をつけてくださいね」
「どうもすみません」
奥さんが家から出て行くのを見送ったあと、俺は意を決して奥の部屋の扉を開けた。
「失礼します」
瞬間、彼はソファーに座った吉弘に睨みつけられた。

重苦しい空気が漂う。
「まあ座れよ」
俺がソファーに座ると彼は切り出した。

「言いたいことわかっているよな」
「すまんかった。だがあれは事故だ。許してくれ」
開口一番、謝罪をするが彼の怒りは治らない。

「ふざけんな!!あんな失態を犯しやがって」
「だから事故だったって言ってるだろう」
新郎は手にした紙くずを俺にぶちまけ、怒りをあらわにした。
俺もつい熱が入り、取っ組み合いの喧嘩になってしまった。思えば大学時代もよくこうして喧嘩した。

「だいたい、子供に金玉けられたくらいであんなに痛がるわけないだろ!!俺の晴れ舞台を台無しにしやがって」
「お前も男ならわかるだろ!!急所だぞ!!」

お互いに胸倉を掴みあう。当然だが力つよい俺の方が有利だった。伊達にボディビルをやっていない。あっという間に吉弘を掴み上げ、床に叩きつけた。
「イッテェ!!」
「少しは頭を冷やせ、馬鹿野郎」

吉弘は投げ飛ばされたのがショックだったのか、俺を睨みながら小さな声でブツブツと何かをつぶやいた。何を言っているかわからない。

俺はそんな彼を放置して、一人ソファに座りなおした。

「まあ座れよ」
今度は俺がそう言うと、渋々ながらも吉弘も座り直す。


「確かに悪かったとは思ってる。お前の晴れ舞台だし、一生の思い出に残ることだからな。だが俺一人のせいにするのはおかしくないか?一番悪いのは俺の金玉を蹴ったあのガキとガキを放置していた親だろ?違うか?」
正論を言ったはずだ。だが吉弘はそれでも小さい声でグチグチ言ってる。
「言いたいことあるならハッキリ言えよ」
大きい声を出すと、吉弘はビクッとしながら駄々っ子のように大口を開いた。

「そりゃ俺だってわかってるさ、だけどなやっぱりやるせねぇんだ。俺と佳美の結婚式だったのに周りの話題はお前のことばっかりだぞ?」
「悪かったとは思ってる」
「知ってるか?お前がガキに金玉蹴られて悶絶している動画、Youtubeに載せられてるぞ」
「え、本当か」

俺は焦った、あんな恥ずかしい格好している俺の動画が大勢に見られているのか。考えただけで顔が赤くなってしまう。

「なあ、頼むよ。俺のこのイライラを沈めさせてくれよ。その動画に俺も少し映ってるんだよ、恥ずかしいだろ」
「はぁ・・」
俺は思った。事故だったとはいえ俺にも責任はある。周りを警戒していれば防げたかもしれない。

「わかった。お前の気がすむならなんでもしてやる」
「本当か?」
「何をすればいいんだ?もっと謝れってか?」
「今日ビルパン持ってきてるか?」
「まあいつもカバンに入れてるが、なんでだ?」
「それ履いてここでポージングしてくれ」

吉弘の考えがよくわからない。だが俺はとりあえず玄関に置いてきたカバンの中から、小さい赤いビルパンを取り出し履いた。
先日けられた金玉はさすがに痛みはないが、少し重くなった気もする。気のせいだろうか。
彼は結婚式同様、ビルパン一丁の姿で部屋に戻った。

「着替えてきたが、こんな格好でどうするつもりだ」
「やっぱスゲェな。服を着ててもデカイのはわかるが。男らしいな」
ビルパン一丁の姿を人に見せるのは慣れている。だがこうして一対一でまじまじと見られるのは少し気恥ずかしかった。しかも相手は昔の細かった俺を知る男だ。
「よくこれだけ鍛えたもんだな。触ってもいいか」
「ああ」
吉弘は筋肉の硬さを知りたいのか、俺の鍛えたガタイを触り始めた。背中、腕、胸、それぞれ俺の自慢の筋肉だ。特に大胸筋は大きさだけでなく形も自信がある。力を入れて胸を大きくしてやった。
「スゲェな」
「おい、やってほしいことって一人鑑賞会か?」
「そうじゃないが、もう少し触らせてくれ」

人に筋肉を触られるのはまんざらでもないが、吉弘ではなく女に触られたいと思う。
吉弘の手は徐々に下に下がり、俺の太ももを撫で始めた。

太ももも俺の自慢の筋肉だ。筋トレして上半身だけ鍛える野郎もいるが、それじゃあだめだ。下半身も鍛えないと真のマッチョとは言えない。

「なあ、もうそろそろ離してくれ。男にいつまでもベタベタ触られるのは気持ちわるい」
「そう言うなって。ここが子供に蹴られた場所だろ?」

吉弘は俺の股間部分を指先で突きながらそういった。
「やめろや」
さすがに俺はそういって手で払いのける。
だが吉弘はめげずに、今度は俺の股間に指パッチンしてきやがった。

「はうっ!!」
金玉を指で弾かれ、俺は思わず股間を押さえて腰を引いた。

「おい・・・なんのつもりだ」
「それだけ鍛えても金玉は急所なんだなって」
「当たり前だろ。イテェな」
わびれもなく、吉弘は再び俺の股間を触ろうとしてきた。俺はそれを払いのけた。

「なあ、さっきなんでもするって言ったよな」
「ああ、言ったがそれがなんだ」
「俺にさ、お前の金玉蹴らせてくれよ」
「はあ!?」
「なあいいだろ?子供に蹴らせてあげて、俺には蹴らせてくれないとかズルいだろ」

なんだこいつ。頭おかしくなったか。
「ふざけんな。俺の金玉はおもちゃじゃねえ。お前に蹴らせるわけねぇだろ」
「さっきなんでもするって言っただろ?それに俺の結婚式をぶち壊しておいてその態度はなんだ」
「だから言ってるだろ?あれは事故だったって」

また振り出しに戻ったような気分だ。俺がどう言おうが吉弘は折れてくれず、どうにも参った。複数回の言い合いの末、俺が折れてしまった。

「一発だけだぞ、本当にそれでチャラでいいんだよな」
「ああ、文句ない」

どうしてこうなったんだ。俺は彼が納得してくれるのならと思い、受けてしまった。金玉を子供に蹴られたからわかる。これから俺は地獄に落とされる。

俺は吉弘に言われた通り、両手を膝に置き、そのまま頭を下げた。
すると吉弘の方から見ると俺の股間が後ろにせり出し、無防備にぶら下がっている。

「いい眺めだな。これからお前の金玉が弾けるわけだ」
「テメェ調子に乗ってんじゃねえぞ、するならさっさとしろや」
「この格好で怒鳴られても怖くねえな」

俺は待った。急所を無防備にぶら下げる驚怖、今からここを男に蹴られるのだ。
くそ、俺の金玉。耐えるぞ俺。


それは唐突だった。吉弘の掛け声も何もなく、俺の金玉は残酷な蹴りによって叩き上げられ、押し潰された。
「ぐおぉぉぉ!!」
俺の両足は衝撃で一瞬浮き上がり、そして俺はバランスを失って床に倒れこんだ。
俺の金玉は足の甲と骨盤とでプレスされ、金玉は衝撃を逃がすようにビルパンの中を逃げ惑う。だが、その衝撃は大の男を倒すには十分だった。

「うぅぅぅ・・・・・うぉ、タマ・俺のキンタマ・・・・」
激痛で呼吸ができない。俺は膝と頭を床につけて、股間を押さえた。そして痛みを紛らわせようと足をバタバタと動かした。

「大丈夫か?」吉弘が俺の腰をトントンと叩いてくれるが、俺は苛立った。
てめえがやったんだろ。

腹の中に何かデカイ虫が暴れているように苦しい
俺は額から脂汗を流しながら床の上でうーうーと唸った。

俺の金玉が弱いのか?違う、男ならみんなそうなるはずだ。男に生まれたからには金玉は急所であり、決して蹴られるためにあるわけではない。

痛いなんて言葉で言い表せない。もう俺の頭は金玉の事でいっぱいだった。筋肉のように金玉も鍛えられたらいいのに。そうすればこんな地獄は経験しなくて済む。

俺はしばらく横倒しになり、吉弘に介抱されながら腹の鈍痛が治まるのを待った。

なんで二回も金玉を蹴られなきゃならないんだ。そういった不満が俺の頭の中でぐるぐると回る。
痛みが引いた頃にはその不満が怒りに変わっていた。

ニヤニヤと笑う吉弘に詰め寄り、怒鳴り散らす。

「おい吉弘!!金玉イッテェんだぞ!!これで満足か!!」
俺の怒りもなんのその、吉弘は全然堪えない。
「スッゲェいい悶絶姿だった!!なあ、もう一回蹴らせてくれないか?」
「ふざけるな!!」

俺は吉弘を押しのけて、さっさとズボンとシャツを着て帰ることにした。
「また今度来いよー。次はもっとキツイ金蹴りしてやるからな」
「二度と来るかボケェ!!」

俺は決めた、もうあいつとは絶交だ!!
家に帰ってYoutubeを見てみると、あいつの言った通り、俺の動画があった。

タイトルは
”筋肉マッチョマン、子供に金玉蹴られて大悶絶!!”

俺はため息をついた。もう金蹴りはコリゴリだ。

END

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