欲望の地下闘技場


洞窟の地下深く。外界から隔たれたその空間は異様な熱気に包まれていた。リングを中心に埋め尽くす人、人、人。
蟻のように群がる生物たちから発せられる怒号。中央で繰り広げられる死闘。そんな世界がこの世には存在する。決して世間には明るみに出ないであろうその光景は、異様というほか無かった。

観客の歓声とともに花道を歩く一人の男。精悍な面持ちでリングに向かって練り歩く。ブーメラン型の燃え上がる赤いビキニタイツに身を包み。観客たちに己の鍛え上げられた肉体を見せつける。厚い胸板を鼓舞し、きりっと刈り上げた漆黒の黒髪は相手を威嚇する。整えられたあご髭はもみあげに繋がり、野生の雰囲気を周囲に漂わせていた。
また、その先を見据えた鋭い眼光はまさに今から戦うであろう亜人を見据え、睨みつける。
ここでは異種格闘戦も珍しくない。相手の亜人もまた、特徴のある逞しい4本の腕を交差させて威嚇をしていた。
鋭い牙と頭上に生えた角が威圧感をもたらすが、男はそんなものには動じない。今まで数多の対戦相手を葬ってきた男にとって、これは上にあがる為の通過点でしかない。

「お前、ここでは無敵と言われている人間じゃないか。まああくまで人間同士での話だがな。」亜人が下からたしなめるように挑発を繰り出した。確かに男にとっては亜人と戦うのはこの試合が初めてだ。冷静ににらみを利かす。「ふん、その汚ねえツラ、血で染めてやるよ。」

今ゴングが鳴った。

先に仕掛けたのは亜人の方だった。しばらく睨み合って、近づいた瞬間。4本の腕を蛇のように使い、先制攻撃を仕掛ける。だが男が半歩下がり回避した事で空振りに終わった。
フットワークが軽いと言っても男にとって4本の腕はかなりの脅威と言える。しばらく男は防戦一方のはてとうとうコーナーまで追い込まれてしまった。
「ふん、最強と言ってもこの程度か。俺の手からは逃れられまい。」男めがけて振り下ろされる4本の腕。一本目の顔面めがけた攻撃はあっさりと回避できたがその後の拳は避けきれなかった。続けざまに顔面、腹、顎と亜人の拳がめり込む。だが、男は歯を食いしばりなんとか隙をついて亜人の反対方向へ潜り込んだ。

再び距離を取って反撃に出ようとするが4本の腕に阻まれ、男は思うように攻めきれないでいた。
観客の歓声が上がる。
「くそっ!!」
「だいぶ息が上がってるな。この程度か」
「この程度のパンチ・・・。今までで一番弱いぞ」男の放ったこの台詞。亜人 にとってはこれは単なる強がりとして取れたが、男にとっては違った。自身のタフネスには絶対の自信があり、このような軟弱な攻撃では決して倒れるほど弱くはない。事実、そのタフネスさは亜人を苦しめる事となる。何度拳を繰り出そうと、男は必ず反撃の格好を取った。手練手数では亜人の方が上だったが、男の拳が1発でも入ると形勢逆転にまで持っていかれた。
「だいぶ息が上がってるな。亜人もこんなもんか。」挑発するように先ほどの台詞をお返ししてやる。 「くそ、それならば。」亜人はある程度距離を取って腰を屈めた。

男は反応しきれなかった。地を蹴り、体当たりの格好で男に向かう亜人。考える間もなく亜人の身体を腕二本で止めるが、時既に遅し 身体を密着させたまま亜人に攻撃の機会を与えることとなる。
「しめた!!」手のひらでがっちりと男の腕を封じながら余った二本の腕で無防備な身体に攻撃を加えていく。
「うぐっ!!」密着させたが運の尽き。割れた腹筋を連続で殴られ、胃液が逆流しそうになる。だが・・・。
「くそっ!!」一方的な攻撃を浴びたにもかかわらず、力はわずかに男の方が強かった。二の腕が大きく盛り上がり、徐々に亜人の身体を押し返していく。男のその野人のような力に戸惑いを感じながらも亜人は次の攻撃に身を転じた。
「ふん、人間風情が。これでも食らえや」
亜人の狙いは今まで狙ってきた腹のさらに下。光沢のあるビキニタイツの中央に下から重い拳を突き込んだ。

ドスっ!!「っ!!グエェェッェェ!!」
予期せぬ激痛に身体が固まり、口をすぼめ、力を緩める。しかし亜人はその男の顔をただ見下ろしながら、二撃目をくりだす。

ズシっ!!「ぐおぉぉぉぅ・・。たま・・。」
その拳は男の戦意を奪うには十分だった。この卑怯ともとれる亜人の攻撃にたいして観客は大歓声をあげていた。
重さはそれほど無いが、なんせ男子最大の急所である。ファウルカップも付けず、いやつけられなかったのだが、そのうえわざわざ狙われやすいビキニタイツを装着したのがまずかった。ビキニの中で金玉が激しく踊り狂う。
亜人は身体を解放して離れると、男はリングの真ん中で膝をついて惨めに悶絶を始めた。
「がはっ!!おおおおぉぉぉぉ」
試合開始まえにすでに股間に重量級のものがぶら下がっていたら、狙おうとするのは当然である。まして同じような急所を亜人は持たない。ゆえにたった二発でこうして這いつくばっている人間は滑稽にみえた。
そして男の悶絶姿が大画面に映し出されるたびに会場の熱気は激しさをます。
ビキニにそれほどの変化は見られないが、中ではたくさんの星が絶えずぶつか り合って激痛を生んでいることだろう。
「全くだっせえな。その筋肉は飾りか、あんなに強気だったのに金的2発でギブとか、どうした?キンタマ痛いのか?」亜人は続ける。「だいたい人間の男って惨めだよなあ。蹴りやすく狙いやすい場所に急所がついてんだもんな、同情するよ。まあ同情はしても潰すけどな。」
男の頭を足で踏みながらそう言い放つ。
すると、亜人の足首に男の手が伸びた。”がし”
あっけに取られたその顔面にお返しとばかりに起き上がり、拳をぶつける。亜人の顔は半分凹みふらふらと後退した。
「くそっ、てめえ卑怯だぞ。急所を狙いやがって」怒りと苦痛の入り交じった顔で、顔面を押さえる亜人をにらむ。
「ぐ、卑怯だと?お前 自分の立場を理解してないのかよ?ここは地下闘技場、ルールは無用だ。」
「うっせえ。てめえに玉の痛みがわかるのかよ」片手を股間に持っていき、揉みながらそう言う。
「わかんねえさ、だから楽しいんだろうがよ。それにこの歓声を聞いてみろよ、お前が惨めに悶絶しただけでこの熱気だぜ。」
確かに観客の声援は、やれ金玉潰せだとか、殺せだとか野蛮な声に包まれていた。そしてその声援に応えるのが、ここのファイターとしての役目だ。「それに金玉やられたくないのなら必死に守ってみろよ、男だろ。」
「ああ、いいだろう。俺のキンタマはてめえに潰されるほどやわじゃねえ」
「なら、お言葉に甘えてきつい一発をお見舞いしてやるぜ。」
男は亜人の卑怯な一手にそなえて相手を倒すべく腰を屈める。今度捕まったらただでは済まない。出来る限り距離を保ちつつリーチを生かして亜人に攻め込んでいった。
軽いフットワークを武器にフェイントを入れ、亜人を翻弄していく。飛び散る汗、雄の熱気、躍動するぶ厚い筋肉。その姿に観客は魅了され、会場は一体になって揺れた。

亜人の多角的な攻撃を避けて勝機を見いだそうとリング上を翔る。しかし・・・。

「!!!!!!!!!!あああぁぁぁぁぁ」数分もしないうちに情けない声を発して前に倒れ込む男。 玉のような汗を大量にかき、声にならない声で叫び、嘔吐いている間、スクリーンでは柔らかな股間に亜人の足が蹴り込まれる瞬間を繰り返し流していた。
亜人はわざと隙を作ってそこを狙わせ、男は まんまとその罠にはまってしまったのだ。
死角からの攻撃、予期せぬ場所から強烈な蹴りが男の大事な場所を襲う。股の間にぶらぶらとぶら下がった美味しそうな果実、そこにつま先がめり込んだ瞬間、ビキニで包まれただけの男の睾丸はたやすく押しつぶされ変形し、身体ごと上に押し上げられる。
雷を落とされたかのように身体を硬直させ、男はその場に崩れ落ちた。


男がこの上ない苦痛に身を任せて死闘を繰り広げる1週間前、安藤康文はソファに身を沈め、入れたてのコーヒーを飲みながら休暇を楽しんでいた。モダンなデザインの家具類を照らす照明器具は、時折ここが地上だと錯覚させる。通販で購入した高い筋トレ器具で思う存分身体を鍛えた後、彼はいつも試合の録画をチェックするべく壁に埋め込まれている80インチもの大画面テレビの電源スイッチに手をかけた。
「今日もまた一方的な試合運び。まったく・・、やる気があるのか」
リングに生で見る分には迫力があっていいだろうが、テレビ画面だとどうしても満足できない。かといって仕事で忙しく会場まで足を運ぶ時間がない。深いため息をつきながら次の試合の日程と内容を調べると、安藤の興味を引く内容が書かれていた。

亜人(リッカー・ハハイン)vs 人間(菊池浩太朗)無制限1本勝負。デスマッチ

菊池という男のことは知っている。数々の名勝負を繰り広げてきたファイターだ。男前で女性に人気があるせいか、急所攻撃を食らっているところをよく見かける。
しかし亜人と戦うのはおそらく今回が初めてだろう。えげつない急所攻撃の中でどう勝機を掴むか拝見しよう。彼はその日のために資金を用意するのだった。

男(浩太朗)はリングの中央で膝をついて悶絶していた。額から流れ出る汗が首筋 胸筋 腹筋の凹凸を伝って床に滴り落ちる。腫れ気味の股間を摩りながら必死に痛みを和らげようとするが、じんじんと下腹部からくる鈍痛が大きくなっていった。
「すごい蹴りだろ、俺の足にお前のタマがえぐり込んだ瞬間の感触がまだ残っているからな。」スクリーンを指差しながらニタニタと亜人特有の笑い方をし、馬鹿にする。
その笑いに男は苛つき痛みをこらえつつもつかみかかる。しかし冷静さを欠いた男は亜人の思うつぼだった。フェイントを入れず、ただやみくもに攻撃すれば、簡単に男の急所を叩かれる。
「おふっ!!!」
隙を狙われ、急所攻撃により一瞬動きが止まると、亜人は男を背後からホールドしてがっちりと固定した。こうなると男は最早逃れる事が出来ない。度重なる急所攻撃によって男のスタミナが奪われてきた。本来ならここでバックキックをして難を逃れるのだが、亜人の股には急所は存在しなかった。それどころかまた男の急所が狙われた。
亜人の2本の手は男を捉える為に使われているが、残り二本はフリーである。そのうちの一本の手が後ろから男の股を通り、まるまると膨らんで弾けそうな男の睾丸を鷲掴んだ。
「た、たまはよせ・・・はなせ」
男の言葉も虚しく、亜人はキリキリと右手に力を込めていく。大きく腫れた右睾丸も左睾丸も亜人の6本の指からは逃れられない。それは男本人が嫌というほど感じていた。尻の間から伸びる6本指をリズミカルに動かし強弱をつけて動かすと、男はそれに合わせて短い悲鳴を挙げる。亜人はこの男のその反応を楽しみ、脂汗を流して耐え忍ぶ人間の男を堪能していた。そしてその男の苦痛に歪む表情を観客に見せる為にゆっくりとリング上を周る。滑らかな生地のビキニの中身は水風船のように膨らみ、亜人が握り込むと指の間からはみ出すように金玉が出てくる。その様子がスクリーンに映し出され、観客はまた歓声を送った。
「どうだ、こうやって金玉握り込まれるとたまんねえだろ。ギブしてもいいんだぜ」
「へ、だれが・・・ぐ・・」あくまで男は強気を見せる。しかし亜人もまたその強気の態度が見たいが為にあえて握り込みを手加減していた。
「その虚勢がいつまで続くかな」再びキリキリと睾丸を責め上げると、亜人は睾丸を締め上げながら中指を器用に折り畳んで男の右玉を弾いた。「あうっ!!」
そしてもう一発。「はう!!!」
金玉をしこたま握られながら、亜人の常人ではない玉ピンを幾度となくくらい、男はひどい寒気におそわれ、筋肉をふるわせた。腰の力が抜け、崩れ落ちる男を亜人が支える。
「ずいぶんと効いてるな」
「だ、だれが・・・ぐぇ・・・ぐあぁぁぁぁぁぁ」どれだけ苦しくてもここで負ければ終わりだと、あくまで強気の発言をする。しかし今まで何人もの人間と戦ってきた亜人である。睾丸の中でどこが一番効くか心得ていた。睾丸の裏側、副睾丸と呼ばれる男の急所の中の急所をさぐりあて、分厚い指で締め上げる。初めて裏玉を責められた男は、あまりの衝撃に上半身をのけぞらせ、顔を精一杯歪ませてその痛みを体現した。
金玉が潰される!!この試合の中で何度も経験したその思いが、今確信に変わる。
「ぐはぁ!!!!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」男は地響きのような悲鳴を上げた。
亜人は男の金玉が弾ける瀬戸際で力をコントロールし、極限の苦しみを男に与え続けていた。そして、それがようやく解放されると、男は糸が切れたかのように床に倒れ込み、脂汗を全身に吹き上げてよだれをながし股間を押さえて悶絶した。食らったダメージは強大で、観客が見守る中、亜人はあえて何もせずに回復を待つ。そして男は潰れたかもしてない恐怖と男としての痛みと戦った。腹の奥底から鈍痛の波が絶え間なく押し寄せる。

数分後、亜人は筋肉隆々な男の惨めな悶絶姿に満足し、倒れ込む男を覗き込ん だ。
「しかしよ、驚いてんだぜ俺は。今までの野郎どもは金玉やったらすぐへばりやがってさ、面白くねえんだよどいつもこいつも。でもお前は違った。最強の名にふさわしいほどタフネスだな。だがまあどんなに粋がっても急所は急所ということだ」亜人は脂汗を流し、悶絶している男を無理矢理立たせ、コーナーへ力任せに振ると共に自分もコーナーへ向かった。
ズシッ。まともに受け身もとれずコーナーへぶつかり、仰向けで倒れ込む浩太朗。その隙に亜人はリング下、つまりは浩太朗の後ろ側へ潜り込んだ。浩太朗の手足を鉄柱をまたいで掴み、悪魔の言葉をささやく。
「何が起きるかわかるだろ。腫れた金玉が弾けちまうかもな。」
「おい、まさか、やめろ!!」うつぶせになった男からは絶望の顔が伺える。
声援を送る観客たちはこれから起こるであろう拷問を固唾をのんで見守っていた。期待を胸に。
会場内でもとびきりの価格を誇る特別観覧席。選手と目と鼻の先にあるその椅子に安藤は腰を据えて、浩太朗の戦いぶりを見守っていた。時折選手の汗や血が飛び散り、また選手の肉声が拡張器なくして伝わってくる。息づかい、挑発、怒号、悲鳴、そのすべてがその場の臨場感を高め、一体感をなして何倍にもふくれあがる。
人間からすると鬼のような形相で強気に攻めながら観客にヒールとしての自分をアピールして会場をもりあげる亜人を、ある者は応援する。またある者はガッチリとした体躯に、小さめのビキニ一丁で軽やかにリング上を右往左往する人間の男を羨望のまなざしで見つめ、応援する。

安藤はまさに後者。浩太朗の針を通すような正確な動きに目をやり、時折他の観客にまじって声援を送る一人。浩太朗が股間を殴られ蹴られ、悶絶する姿を特等席で鑑賞できる。今日はこの為に来たと言っても過言ではない。固いつま先が股間のもっこりに入るびに内股になりその厳つい顔を歪ませてリングの上に沈む。そして男としての戦いが始まるのだ。この上ない激痛に身を委ねて身体を丸めながら必死に股間を揉みしだく。
安藤はというとその光景に興奮していた。浩太朗のような野獣でも金玉をやられればひとたまりも無い。だがその目は相手をじっと見据え、闘争心までは失われてはいなかった。
しかし今度はそうはいかないだろう。浩太朗の場所、格好からこれから鉄柱にしこたま打ち付けられるだろうことが安易に想像できる。股間にぶら下がっている物は今までは浩太朗の動きに合わせブラブラとぶら下がっていただけだが、幾度とない急所攻撃に見舞われてリンゴ大に腫れ上がり窮屈そうにビキニに収まっているのが見て取れる。
だが その中には不可解な点があった。おそらく数名が感じているだろうその変化。それが何を意味するのか、安藤は一人にやりと笑みを浮かべるのだった・・・。

安藤の目の前で亜人は手を高らかに挙げ、観客にカウントダウンの指示をした。手を広げ大声で数を数える。
『5!!!!』観客もそれに合わせてカウントをする。
『4!!!!』浩太朗自身は恐怖に顔を引きつらせ、顔を手で覆った。
『3!!!!』徐々に声がでかくなり、会場の一体感がます。もはや浩太朗を応援するものはいなかった。
『2!!!!』浩太朗がもだえ苦しもうが睾丸が潰れようが関係ない、リング上で行われているのは単なるショーであった。
『1!!!!』
と同時に勢いを付けて浩太朗の足が無理矢理引っ張られた。大きく出っ張ったその双球が吸い寄せられるように固い鉄柱に向かう。
「ッ!!!!」
鈍い音とともに声にもならない声が発せられる。
睾丸が固い金属に押しつぶされた瞬間、顔を苦痛に歪ませて勢いよく上半身を起き上がらせた。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!!おぇ!!」
口をぱくぱくさせ、鼻息も荒く「ふぅぅ、ふぅぅ。」とつぶやく。熱を帯びた己のタマをいたわるように摩り、憎悪の対象をそっと見据える。
「てめえ、はあはあ。本気で俺の男を。」
「どうだ、鉄柱の味は」そう言うと亜人は再び魔のカウントダウンを始めた。
浩太朗は怯えた様子でその場から離れようとするが亜人の手がそうはさせない。観客はもはや浩太朗の敵であった。
ふんっ!!!「ぁぁぁぁぁハヒッ!ハヒッ!!」
ほっ!!「があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ん!!「た・・たま・・おれの・・」
そして幾度となく鉄柱にぶつけた後、男の足を思い切り引き、そのまま力一杯引き続けた。

「あああああ!!!やめてくれ!!!!おれの!!!おれのたまが!!!」金玉がビキニによって固定されているため、また大きく腫上がっている為、普段なら金玉が逃げるであろうその攻撃も、確実に男に襲いかかった。
憐れな男は己の骨盤と硬い鉄柱の間でこれでもかというほどひしゃげ、男の急所から発せられる地獄のような苦痛に身体を震わせた。逃げる術など無い、ただ亜人が手を緩めるまで己の急所をいたぶられ、口をパクパクと開けて惨めに悶絶する。
あまりの責めの苦痛に失禁を催して股間から暖かい体液が流れ出るが、亜人はそれでも攻撃の手を緩めなかった。

試合が終わり、観客の歓声が鳴り止まない中、敗者である男は惨めにリング上で失神し、その醜態をさらけ出していた。幸いなことに亜人の医学でもってすれば彼の潰れた睾丸も直す事ができるだろう。 しかしこの男の悲劇はこれで終わらない。地下闘技場の敗者には戻る場所は無かった。

「それではオークションを始めます」そうアナウンスされ、会場は静まり返った。この場所は無法地帯、故にこうして人身売買が日々行われているのだ。闘志あふれる男はここでは高値で取引される。試合を観戦している者の中には、このオークション目当ての者も少なからずいるわけである。安藤がまさにそれであった。

彼はこの機会を待っていた。彼のように急所をやられても耐えようとする人間はそうそういない。そんな人間をどのように服従させるか、考えただけで興奮を隠す事が出来ない。スクリーンに映し出されるオークションの金額をみるたびに彼はにやけた笑みを浮かべた。この日の為にどれほど資産を手放したかわからない。この男の人気は高く、値段が跳ね上がるがそれでも彼は諦めなかった。そしてついに。

「本日の落札者は、安藤康文様です。おめでとうございます」スクリーンに映し出されたと同時に彼はガッツポーズを決めた。

安藤に買われた男は、彼の家でどのような生活が待っているのだろうか。それは安藤と浩太朗にしかわからない。


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